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​火の玉宇宙?

 夜空を見上げてみてください。またたく星々と、それを抱擁する暗闇。目線の先には、どこまでも果てしない空間が広がっているように感じられます。実際に、いま私たちが生きている宇宙は、途方もなく大きい空間です。でも、宇宙は初めから今のような姿をしていたわけではないのです。

 私たちの宇宙は、大爆発によって非常に小さな体積として生まれたと考えられています。この大爆発から始まったとされる宇宙の理論的な仮説は、そのままズバリ「Big Bang(ビッグバン=大爆発)」仮説と名付けられています。この仮説は、宇宙背景放射の発見により間接的に確かめられています。

 それでは宇宙はどうやって今の姿になったのでしょうか?実は、私たちの宇宙空間は、時間と共に膨張していることが観測的にわかっています。ほんの小さな体積から、今の宇宙の姿になるまで、膨らむ風船のように膨張し続けたのです。このことからも、私たちの宇宙が経てきた悠久の時が感じられます。下の図は、膨張し続けている私たちの宇宙の歴史を模式的にあらわしています。左から右に向かって時間が進んでいくと思ってください。線で囲まれた空間が宇宙を表しており、時間が進むにつれて宇宙空間がどんどん大きくなっていく様子が描かれています。

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図:  ビッグバン仮説に基づく宇宙の歴史のイメージ図

(Toru Iijima (c) KMI/Nagoya-U)

 それでは逆に、今の宇宙を出発点にして時間をどんどん巻き戻し、宇宙最初の瞬間がどんな様子だったかを想像してみましょう。宇宙を箱に見立てて、その中にものを詰めてどんどん箱の大きさを小さくしていったとします。箱の大きさを小さくすればするほど、中のものはどんどん押しつぶされていきますよね。中身はどんどん密になり、温度はぐんぐん上昇し、最後には、地殻中のマグマのようにドロドロに溶けてしまうでしょう。このことから、初期段階の宇宙は、超高温・高密度の極限的な状態だったとわかります。まさに、灼熱の火の玉のような状態です。この例えから、ビッグバンから始まったごく初期の宇宙は「火の玉宇宙」とも呼ばれているのです。

 さて、ここまで「長い長い宇宙の歴史を経て、どうやって今の宇宙の姿が実現したか」について、まるで初めから最後まで、この目で見てきたような言い方をしました。しかし当たり前ですが、実際のところは宇宙の歴史を本当に見てきた人はいません。それでも、物理学者たちは

 •実験・観測事実を手がかりにした理論的な考察

 •理論的な予言をもとにした実験・観測的検証

という双方向のアプローチを繰り返して、少しずつ少しずつ、謎に包まれた宇宙の姿に迫ろうとしているのです。

参考リンク:
KMI film (ショートムービー)
たとえ同じ「宇宙」を研究の対象にしていても、興味や着眼点が異なれば、研究のアプローチは大きく異なります。KMI filmでは、素粒子宇宙起源研究所(Kobayashi-Maskawa Institute)がどんなアプローチで宇宙の起源に迫ろうとしているかについて、約4分の動画でコンパクトに紹介されています。
​「ポケットに物理を」
このコンテンツでは、宇宙は膨張を続けて今のように非常に大きな空間になったと述べました。すなわち、過去に遡れば宇宙は非常に小さな空間だったことがわかります。それでは、​宇宙が手のひらにのる付箋紙くらいの大きさだったのは、宇宙が生まれてからどれくらい後のことだと思いますか?実は簡単な比の計算から見積もることができて...。
興味のある方は、ぜひリンク先のコンテンツをご覧ください!
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