それでは宇宙はどうやって今の姿になったのでしょうか?実は、私たちの宇宙空間は、時間と共に膨張していることが観測的にわかっています。ほんの小さな体積から、今の宇宙の姿になるまで、膨らむ風船のように膨張し続けたのです。このことからも、私たちの宇宙が経てきた悠久の時が感じられます。下の図は、膨張し続けている私たちの宇宙の歴史を模式的にあらわしています。左から右に向かって時間が進んでいくと思ってください。線で囲まれた空間が宇宙を表しており、時間が進むにつれて宇宙空間がどんどん大きくなっていく様子が描かれています。
図: ビッグバン仮説に基づく宇宙の歴史のイメージ図
(Toru Iijima (c) KMI/Nagoya-U)
それでは逆に、今の宇宙を出発点にして時間をどんどん巻き戻し、宇宙最初の瞬間がどんな様子だったかを想像してみましょう。宇宙を箱に見立てて、その中にものを詰めてどんどん箱の大きさを小さくしていったとします。箱の大きさを小さくすればするほど、中のものはどんどん押しつぶされていきますよね。中身はどんどん密になり、温度はぐんぐん上昇し、最後には、地殻中のマグマのようにドロドロに溶けてしまうでしょう。このことから、初期段階の宇宙は、超高温・高密度の極限的な状態だったとわかります。まさに、灼熱の火の玉のような状態です。この例えから、ビッグバンから始まったごく初期の宇宙は「火の玉宇宙」とも呼ばれているのです。
さて、ここまで「長い長い宇宙の歴史を経て、どうやって今の宇宙の姿が実現したか」について、まるで初めから最後まで、この目で見てきたような言い方をしました。しかし当たり前ですが、実際のところは宇宙の歴史を本当に見てきた人はいません。それでも、物理学者たちは
•実験・観測事実を手がかりにした理論的な考察
•理論的な予言をもとにした実験・観測的検証
という双方向のアプローチを繰り返して、少しずつ少しずつ、謎に包まれた宇宙の姿に迫ろうとしているのです。